京都府福知山市大江町は和紙づくりに適した美しい水に恵まれた土地であり、江戸時代末期から和紙の生産が盛んで、京都府の代表的な和紙の生産地として栄えていました。しかし時代とともに衰退していき、最盛期には200戸余りあった製紙所は、現在田中製紙工業所たった1軒となっています。
和紙の原料である楮の栽培から、楮の処理、紙漉きまで全てを自分たちで行い、伝統的な技法で他にはない和紙をつくり続けている「丹後二俣紙」は、京都府の無形文化財に指定されています。
草刈りや消毒をして楮を育て、刈り取った楮を蒸して皮をむき、空気が乾燥している冬に天日干しをして乾燥させ、1年分の楮を用意・保管します。さらにこの楮の皮を様々な工程を経て処理し、細かい繊維にします。原料の準備段階からこういった膨大な手間と時間がかかっています。
漆を濾すために使用する極めて薄い「漆濾し紙」を作る技術は難しく、田中製紙工業所5代目の田中さんと、全国で他に1人だけです。また、文化財修理のための和紙も生産されており、日本のみならず海外の文化財の修復にも使用されています。